本記事にはプロモーションを含みます
結論から言うと、借入で大事なのは金額の大小ではなく、返し切れる計画になっているかどうかです。理由は、開業後に手元へ残る現金が、思っていたより少ないからです。筆者は開業時に借入をし、返済期間を15年に設定しました。当時は低金利の時代です。金利のある今の状況で同じ計画を立てるなら、頭金を多めにして借入額を抑えると思います。
実際に借りた経験と、今の金利状況を踏まえて、資金計画で外せない考え方を整理します。
15年という返済期間

結論として、返済期間の長さは、そのまま事業を続ける前提の長さになります。開業時に借入をし、返済期間を15年に設定しました。当時は、毎月の返済額を無理のない範囲に抑えることを優先した判断です。
返済期間を長くする意味
期間を長くすれば、毎月の返済額は下がります。開業直後で売上が読めない時期には、この安心感は大きいものです。
低金利だった当時の前提
ただし、その判断ができたのは低金利の時代だったからです。期間が長くても、利息の負担がそこまで重くならなかったという前提がありました。
15年間ずっと続く支払い
一方で、15年という期間は決して短くありません。売上が良い年も悪い年も、返済は同じように続いていきます。
金利のある世界へ

結論として、借入を取り巻く前提そのものが変わりました。数年前の常識のまま計画を立てると、実際の負担とずれてしまいます。政策金利の推移を見ると、その変化がはっきり分かります。
- 2024年3月:マイナス金利政策を解除し、0.1%程度へ
- 2025年1月:0.5%程度
- 2025年12月:0.75%程度
- 2026年6月:1.0%(約31年ぶりの高い水準)
政策金利が上がり続けている
マイナス金利の解除から、段階的な引き上げが続いています。2026年6月には1.0%となり、約31年ぶりの高い水準になりました。
貸出金利への影響
2026年3月から5月にかけて、各銀行が基準金利の引き上げを発表しています。引き上げ幅は年0.25〜0.35%程度と、銀行によって差がありました。変動金利型の場合、見直しによって返済額が増える可能性があります。
創業融資の金利水準
日本政策金融公庫の新規開業資金は、無担保・創業期で年3.35〜4.75%程度とされています(2026年4月時点)。条件によって引き下げが適用される場合もありますが、まずはこの水準を前提に考えておくと安全です。
頭金を多めにという判断

結論として、金利が上がった今こそ、借入額そのものを抑える意味が大きくなります。500万円を15年で返す場合を例に、金利と頭金で数字がどう変わるかを見てみましょう。
金利 年1.5%の場合(低金利の時代)
| 借入額 | 頭金 | 毎月返済 | 総返済額 | 利息合計 |
|---|---|---|---|---|
| 500万円 | なし | 31,037円 | 5,586,687円 | 586,687円 |
| 400万円 | 100万円 | 24,830円 | 4,469,350円 | 469,350円 |
| 300万円 | 200万円 | 18,622円 | 3,352,012円 | 352,012円 |
金利 年3.5%の場合(金利のある世界)
| 借入額 | 頭金 | 毎月返済 | 総返済額 | 利息合計 |
|---|---|---|---|---|
| 500万円 | なし | 35,744円 | 6,433,943円 | 1,433,943円 |
| 400万円 | 100万円 | 28,595円 | 5,147,154円 | 1,147,154円 |
| 300万円 | 200万円 | 21,446円 | 3,860,366円 | 860,366円 |
※返済期間15年・元利均等返済で試算した例です。実際の条件は金融機関により異なります。
金利差で利息が約85万円変わる
同じ500万円でも、金利1.5%なら利息は約59万円、3.5%なら約143万円です。その差は約85万円になります。借りる額が同じでも、時代によって返す総額はこれだけ違います。
頭金が利息を圧縮する
金利3.5%のとき、頭金200万円を入れて借入を300万円に抑えれば、利息は約143万円から約86万円へ。約57万円の圧縮になります。頭金は、そのまま利息の削減額として返ってきます。
毎月の返済額という視点
毎月の返済額も、500万円なら35,744円、300万円なら21,446円です。その差は1万4千円ほど。この金額が毎月手元に残るかどうかは、開業直後の資金繰りに直接効いてきます。
手元に残すという発想

結論として、借りられる上限まで借りるのではなく、手元に現金を残しておくことが大切です。借入額を目一杯にすると、想定外の出費に耐えられなくなります。
現金がなくなる怖さ
事業は、利益が出ていても現金が足りなくなることがあります。入金と支払いのタイミングがずれるからです。手元の現金が尽きれば、そこで止まってしまいます。
生活防衛資金という考え方
生活防衛資金とは、収入が止まっても一定期間は暮らしていける現金のことです。事業用の資金とは別に、生活を守るためのお金として確保しておきます。
いくら残すかを先に決める
借入額を決めるとき、「いくら借りられるか」ではなく「いくら手元に残すか」を先に決めておくと、無理のない計画になります。
売上と手元の現金は別

結論として、見かけの収入に惑わされないことが、資金計画で一番大事な視点です。売上の数字が大きくても、そこから経費と返済が出ていきます。
売上がそのまま残るわけではない
売上から仕入れや家賃、人件費などの経費を引いた残りが利益です。手元に残る現金は、さらにそこから返済を引いた金額になります。
返済は利益から出ていく
借入の返済のうち元本部分は経費になりません。帳簿上は利益が出ていても、その利益から返済分が現金として出ていきます。ここが見落としやすい部分です。
資金計画を先に立てる
開業前は、売上の見込みに気持ちが向きがちです。しかし本当に必要なのは、毎月いくら出ていくかを先に把握することです。そのうえで、返せる金額から借入額を逆算していきます。
お金の全体像をつかむうえで、「お金の大学」がわかりやすくまとまっています。初めての方は、漫画から入る方法もあります。
|
改訂版 本当の自由を手に入れる お金の大学 [ 両@リベ大学長 ] 価格:1650円 |
お金の流れを体系的に学びたい方へ
|
漫画 お金の大冒険 黄金のライオンと5つの力 [ 両@リベ大学長 ] 価格:1958円 |
まず全体像をつかみたい方は、こちらから
よくある質問

ここでは、開業時の借入についてよく寄せられる疑問に、Q&A形式でまとめて答えます。
借入はしない方がよいのか
一概には言えません。設備投資が必要な事業では、手元資金だけで始めると生活防衛資金まで使い切ってしまう可能性があります。借りること自体より、返せる計画かどうかが重要です。
返済期間は長い方がよいのか
毎月の負担は軽くなりますが、期間が長いほど利息の総額は増えます。金利が高い局面では、この差が大きくなります。
頭金はいくら入れるべきか
決まった正解はありません。ただし、頭金を入れて手元の現金が不足するのでは本末転倒です。生活防衛資金を確保したうえで、残せる範囲で入れることになります。
変動金利と固定金利はどちらがよいか
金利が上昇する局面では、変動金利は返済額が増える可能性があります。返済額を確定させたいのか、当初の負担を抑えたいのかで判断が変わります。金融機関に相談してみてください。
資金計画は誰に相談すればよいか
税理士や、金融機関の融資担当者が相談先になります。数字の根拠を一緒に確認してもらうと、見落としに気づきやすくなります。
返せる額から逆算する

借入は、借りられる金額ではなく、返せる金額から決めるものです。金利のある世界に変わった今、同じ金額を借りても返す総額は以前より大きくなります。頭金で借入額を抑え、手元には生活防衛資金を残しておく。この2つを守るだけで、資金繰りの余裕は大きく変わります。
開業の計画を立てるときは、まず毎月いくら出ていくかを書き出してみてください。そこから逆算すれば、借りるべき金額が見えてきます。

